静景日和

撮って、失敗して、また撮る。OM-1と歩いた記録。

皆既月食を撮った夜の失敗記録|赤道儀の限界とデータが教えてくれたこと

2025年9月8日の未明、皆既月食を撮りに錦江湾沿いの海岸へ行きました。数日前から準備とロケハンを重ねて臨んだのですが、いざ当日を迎えてみると、感動よりもまず「苦労」の連続。ここでは、撮影中に直面した課題と、あとからRAWデータを見返して分かったことを書いていきます。

皆既が明け、上部が白く輝き始め下部が赤銅色に残る月。撮影当日のトライ&エラーの象徴的な一枚。
皆既が明けて、上の縁から光が戻り始めた瞬間。
OM SYSTEM OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
60mm|F2.8|1/2秒|ISO500(トリミングあり・午前4:02撮影)

機材の重さ

今回持ち込んだのは、カメラとレンズのセット、三脚、天体望遠鏡本体とその三脚。これだけでかなりの重量になり、現地まで運ぶだけで肩に食い込むほどの負担でした。

改善ポイント:その日の目的に合わせて機材を厳選。「月を撮るのか」「星雲も狙うのか」で持ち物を整理し、体力を消耗しすぎないようにします。

ポラリエUの限界

ポータブル赤道儀の「ポラリエU」で月追尾&長時間露光を狙っていましたが、カメラとレンズの重量が想定以上で固定できず焦りました。高ディテールで残す計画は断念。

改善ポイント:搭載重量を事前にしっかり確認して運用。さらに星雲なども撮りたいなら、ポータブル赤道儀に加えて本格的な赤道儀系も視野に入れる必要があると感じました。

ピント合わせの難しさ

テレコンバーター MC-20 を装着したことで、ピントが非常にシビアに。星空AFは効かず、最終的にMFで追い込み。わずかなズレが写り全体に響くため、シャッターのたびに神経を使いました。

改善ポイント:MF前提で練習を重ね、撮影前にテストショットを多めに撮って確実に山を掴む習慣をつけます。

ロケハンのズレ

「サンサーベイヤー」で位置確認はしていたものの、実際はシミュレーション通りにならず構図が変化。

改善ポイント:ロケハンは“参考値”。現場では柔軟に構図を変えられる余白を確保します。

レリーズが欲しかった

セルフタイマーでブレ対策はできたものの、テンポや細かい調整には不便でした。

改善ポイント:レリーズを導入して効率と精度を上げます。

蚊の襲撃

暗闇では叩くことも難しく、羽音で集中が途切れる不快さが続きました。

改善ポイント:季節の敵と割り切って、虫よけ・着衣でしっかり対策。

データを見返して気づいた、機材の切り替え

この記事を書き直すにあたって、当日のRAWデータを撮影時刻順に見返してみました。すると、自分でもはっきり覚えていなかった機材の動きが記録に残っていました。

  • 深夜2:36〜3:03(皆既中):40-150mm F2.8+テレコンMC-20(換算600mm)|F5.6|1.6秒|ISO3200
  • 午前4:02〜4:37(皆既明け):60mm F2.8 Macro(換算120mm)|F2.8|1/2秒→1/640秒|ISO500

後半、レンズを60mmマクロに替えていたんです。おそらく、月の軌跡を1枚に収める合成写真を撮ろうとして、画角の広いレンズに替えたのだと思います。換算600mmでは月の移動がすぐ画面から出てしまうので。この記事に載せている2枚も、60mmのコマからのトリミングです。

数字を見ると、月の明るさの変化もよく分かります。皆既中の赤い月は1.6秒・ISO3200まで粘らないと写らないほど暗く、皆既が明けて光が戻ると1/2秒→1/640秒までシャッターを速くしていました。同じ月とは思えないほどの露出差です。当日は夢中でしたが、データがそのまま観測記録になっていました。

皆既月食の終盤、影から抜けていく途中の月。明るさが戻り、モノクロのような色合いに見える。
皆既が明けて、影から抜けていく途中の月。
OM SYSTEM OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
60mm|F2.8|1/640秒|ISO500(トリミングあり・午前4:37撮影)

天体撮影を初めて本格的に挑戦する人へ

この日の撮影で直面した課題を振り返ると、事前準備の不足が失敗の多くを占めていました。機材選定・ピント練習・虫よけまで、当日いきなり対処しようとすると思った以上に消耗します。

  • 機材はその日の目的に絞る:「月を撮る」「星雲も狙う」など目標を一つに絞り、必要な機材だけ持つ。重くなるほど集中力を奪われます。
  • ポータブル赤道儀は搭載重量を必ず確認:カメラとレンズの合計重量が搭載上限を超えると固定できません。事前にスペックを確認すること。
  • MFのピント合わせは撮影前に練習する:テレコンバーター使用時はピントが非常にシビアになります。本番前にテストショットを多く撮って、ピントの山の掴み方を確認しておく。
  • ロケハンは参考値。現場では柔軟に:シミュレーションアプリで位置を確認していても、当日は想定外の構図になることがあります。余白を持って立ち位置を変えられる準備を。
  • レリーズを用意する:セルフタイマーでブレ対策はできますが、タイミング調整に不便です。有線・無線どちらでも、レリーズがあると操作性がよくなります。
  • 虫よけは必須:暗い場所での長時間撮影は虫との戦いになります。忌避剤・長袖・帽子など、季節に合わせてしっかり準備を。

まとめ

こうして振り返ると、苦労のオンパレードでした。けれども、それぞれの失敗や不快な経験は「次はどうするか」という改善点に変えられます。そして今回あらためて感じたのは、RAWデータは撮影の記憶そのものだということ。覚えていない機材の切り替えも、露出の試行錯誤も、全部データに残っていました。

撮影には、こんなふうに予想外の苦労話がつきまとうものです。これから皆既月食や天体撮影に挑戦する方は、ぜひ僕の経験も参考にしてみてください。

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この夜に使った比較明合成の手順は、花火写真の編集記事に詳しく書いています。

→ 花火写真の編集方法|DxO PureRAWとKikuchiMagick+Lightroomで仕上げる流れ

この記事を書いた人

Photo.SeTa|OM SYSTEM OM-1で、九州を中心に風景・花・夜景を撮影。フォトマスター検定2級。PIXTA・Adobe Stockにてストックフォト350点以上を公開・販売中。作例の撮影設定を掲載する場合は、RAWデータから確認した実際の値を使用しています。運営者情報


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